数学は長い歴史をもつ学問として,とりわけ数,図形,量に関わる諸問題に関わりながら進歩してきました。 それらは代数,幾何,解析とよばれる分野へと発展し,自立した学問体系としての数学を形成するとともに,広く応用され,現代のわれわれの生活を支えています。コンピュータの利用技術も含めて,あらゆる科学技術の基礎は数学が支えていると言っても過言ではありません。ガリレオは『自然は数学の言葉で書かれている』と言いましたが,今日ではより一般に数学は『科学を記述する言葉』として,あらゆる科学の基盤を成すものと考えられています。そこに数学が幅広く応用される根本的な理由があり,その背景にあるのが数学のもつ論理的厳密さや抽象性です。

数学コースでの学びは公式や定理の厳密な証明を確認しながら進んでいきます。それを通じて,数理的直感を身につけ,抽象的で論理的な思考力を磨くことができます。こういうと何か難しそうですが,具体的な現象や個々の例から普遍的な事実を突き止めるためのプロセスが抽象化であり,論理的とは「何が仮定で何が結論か?」をはっきりさせることです。それらを通じて「この言葉の定義は何か?」といった問題に行き着くこともあります。さらには,どうしてそんな定義をするのか?・・・などなど,何事も根本から考える姿勢を身につき,それは物事の本質的な点を見抜く力にも通じるものです。これは高校までの数学の勉強では経験できないことだろうと思います。これらの経験を積んだ数学科・数学コースの卒業生・修了生は,社会にとって貴重な人材としてさまざまな分野で活躍しています。

このように,抽象的・論理的思考力の訓練は数学を学ぶことによって得られる大きなメリットですが,何よりも数学は「おもしろい」ものです。数学コースでの勉強を通じて,そんな好奇心を各人の個性にあわせて育てていってほしいと思います。そのために,わたしたちは心から手助けをしたいと願っています。

わたしたち数学コースのスタッフは,論理と直感の可能性を伸ばし,数理の世界を垣間見たいという意欲をもったみなさんの入学・進学を心待ちにしています。