講演記録(敬称略、時系列逆順)

12月13日

権 寧魯 氏(九州大学)

Determinants of Laplacians on Hilbert modular surfaces

アブストラクト: リーマン面の素測地線の集合から定義されるセルバーグゼータ関数は、マース形式の空間に作用する双曲的ラプラシアンの正規化行列式を用いて表示できることが知られている。これのヒルベルトモジュラー曲面へのある種の一般化と得られた結果について解説する。


 11月22日

厚地 淳 氏(慶應義塾大学)

複素葉層構造を持つ空間の関数論的性質と拡散過程

アブストラクト: 多変数関数論では、複素葉層構造を持つ空間が種々の場面で現れ、重要な研究対象となって来ています。一方、近年の葉層構造の幾何学研究者の間では、葉層構造に付随した葉向ブラウン運動という拡散過程を用いた葉層構造の研究も盛んになってきました。談話会では、このような研究を少々概観し、集中講義で述べた確率論的な値分布の研究方法を用いた、未だ原初的段階ですが、葉向正則写像の値分布の研究などについてお話ししたいと思います。


11月8日 17:30~18:00 ※通常と時間が異なります. また, Tea Time も30分繰り下げます.

石渡 哲哉 氏 (芝浦工業大学)

スケール不変性を利用した爆発レートの数値的推定について

アブストラクト: 常微分方程式(系)や偏微分方程式の爆発解の爆発レート(Blow-up rate)を数値的に推定する方法を提案する。ここでは、対象とする方程式を、スケール不変性をもつ方程式(系)に限定して、そのスケール不変性を利用した爆発解の数値計算法であるリスケーリング・アルゴリズムを適用する。この計算過程で出てくるリスケール時間列に関連する量の特徴から数値的に爆発レートを推定することができる。この方法は非常に単純ではあるが、冪タイプの爆発レートだけでなく冪に$\log$ や$\log\log$等の加速項がついたような複雑な爆発レートについても適用が可能である。本講演では、この計算法といくつかの爆発問題への適用例について紹介する。
なお、本研究は穴田 浩一 氏 (早稲田大学高等学院), 牛島 健夫 氏(東京理科大学理工学部)との共同研究である。


10月31日() ※通常と曜日が異なります.

Gary G. Gundersen 氏 (ニューオリンズ大学名誉教授)

Research questions on meromorphic functions and complex differential equations

アブストラクト: Twenty-eight research questions on meromorphic functions and complex differential equations will be stated.  Progress, examples, references, and comments on these questions will be discussed.


7月12日 16:30~18:00 ※通常と時間が異なります. また, Tea Time はありません.

森本 芳則 氏 (京都大学)

切断近似をしないボルツマン方程式

アブストラクト: 気体運動論の基礎方程式であるボルツマン方程式は,物理的に重要なモデルでは衝突項の積分核が粒子の衝突角度を変数として特異性をもつ.特異性の困難を避けるため,特異性をもつ部分を単純に取り去った”切断近似”の条件のもとで多くの場合,ボルツマン方程式は考察されるが,特異性を考慮すると衝突項は非線形であるものの擬微分作用素的な振る舞いをすることも古くから知られていた.本講演では,ボルツマン方程式と衝突積分項の特異性について解説し,切断近似をしないボルツマン方程式に対して特徴的におこる解の平滑効果に関する最近の結果について報告する.


6月30日(金) ※通常と曜日が異なります.

Kimball Martin 氏 (University of Oklahoma)

Special values of L-functions

アブストラクト: L-functions are certain meromorphic functions associated to number theoretic objects, which include the Riemann zeta function as a special case. I will begin with elementary (but not easy) questions in number theory about sums of squares and cubes, and explain how values of L-functions at special points encode deep arithmetic about such problems.

At the end, I will discuss some ways of studying these special values.


5月31日

堤 誉志雄 氏 (京都大学)

3次分散項を持つLugiato-Lefever方程式とグローバル・アトラクター

アブストラクト: 減衰項と外力を持つ3乗非線形性を持つシュレディンガー方程式 (Lugiato-Lefever equation) に,3次分散項を付け加えた方程式(3LL)を周期境界条件の下で考える.グローバル・アトラクターは,解の時間大域挙動を特徴付けるため,それが存在するか否かは重要な問題となる.グローバル・アトラクターの存在証明の標準的な枠組みは,解を引きつける吸引域 (abosorbing set) の存在を示すこと,および解軌道の前コンパクト性を示すことからなる.放物型のような散逸項を持つ方程式や,今回の(3LL)のように減衰項を持つ方程式の場合,吸引域の存在は容易なことが多く,証明はほぼ解軌道の前コンパクト性を示すことに帰着される.放物型の場合,散逸性は解の平滑化効果を保証するが,(3LL)のような分散型方程式の場合は平滑化効果は期待できない.そのため,弱位相でのコンパクト性を強位相でのコンパクト性に高める際に,いわゆるJohn M. Ballの論法が使われることが多い.しかし,(3LL)の場合エネルギー汎関数が正定値でないことから,グローバル・アトラクターは2乗可積分空間$L^2$で構成しなければならないため,新たな困難が生じBallの論法を直接適用することはできない(Ballの論法を改良した,Molinetの論法が必要になる).

今回はBall-Molinetの論法は使わず,別のアプローチを解説したい.まず,Fourier制限法を用いて,非線形性と共鳴周波数の関係を解析することにより,非線形分散型方程式においても,ある意味で平滑化効果が存在しうることを説明する.その結果として,グローバル・アトラクターの存在証明も従うことになる.

 なお本講演は,宮路智行氏(明治大学先端数理科学インスティテュート)との共同研究に基づいている.