講演記録(敬称略、時系列逆順)

10月17日(水)

黒川 信重 氏

オイラーと絶対ゼータ関数

アブストラクト:21世紀の絶対ゼータ関数論の先駆けとして,オイラーが1774年~1776年に 行った考察に深い意味があったことが2017年に発見された.その周辺を話したい.


7月25日(水)

吉野 正史 氏(広島大学)

ボレル総和法の見地からの正則ベクトル場の線形化問題について

アブストラクト:Cn の原点の近傍で正則なベクトル場を原点を固定する座標変換で線形化するという問題を考える.これはポアンカレ以来多くの重要な研究がなされてきた問題である.よく知られているように,この線形化問題では小分母の問題という発散の問題がおこり,Diophantine条件を用いた解析がなされている(Stolovitchなど).Diophantine条件は発散をコントロールする方法であるが,発散をとらえる別のやり方として,Ito氏の研究のアイデアである可積分性に注目するという考えも有用である(たとえばZungの研究なども参照).これらの研究を踏まえて,パラメトリックボレル総和法を用いて,変換の構成であらわれる発散を意味づけする方法について考察する.基本的な考え方は,変換の満たすホモロジー方程式を考え,これの解として得られる座標変換の構成でパラメトリックボレル総和法を用いる.つまり,形式的な座標変換として構成された発散級数のボレル総和法での意味付けを行うことにより解を構成するいう考えによる,我々はこの視点からいくつかの結果がえられたことを報告したい.結論としてボレル総和法は力学系の研究では有用であるが,線形化問題にたいしても適用可能であることがわかったということになる.

参考文献:Masafumi Yoshino, Analytic continuation of Borel sum of formal solutionof semilinear partial differential equation, Asymptotic Analysis 92 (2015) 65-84. DOI 10.3233/ASY-141270.


7月11日(水)

Kei Kobayashi 氏(Fordham University)

Stochastic differential equations modeling subdiffusions and their strong approximation scheme

アブストラクト:Standard Brownian motion composed with a random time change given by an inverse stable subordinator has been used to model subdiffusions, where particles spread more slowly than the classical Brownian particles. The time-changed Brownian motion is neither Markovian nor Gaussian and has densities satisfying a time-fractional order heat equation; thus, standard procedures known for normal diffusion processes do not generally work. The first part of this talk gives an overview of various properties of the time-changed Brownian motion, which is followed by an introduction of associated stochastic differential equations and their numerical approximation scheme. The effectiveness of the scheme is verified through a discussion of the rate of strong convergence.
The talk is based on joint work with Molly Hahn, Sixian Jin, Ernest Jum, and Sabir Umarov.


6月20日(水)

中村 伊南沙 氏(金沢大学)

分岐被覆曲面結び目,特にトーラス被覆結び目について

アブストラクト:曲面結び目とは,4次元ユークリッド空間内に埋め込まれた閉曲面の全同位による同値類のことである.講演者は曲面結び目の中でも特に,曲面結び目の分岐被覆の形をした曲面結び目,分岐被覆曲面結び目について研究している.この講演では曲面結び目の不変量や鎌田のチャート表示について紹介し,底となる曲面結び目が標準的に埋め込まれたトーラスである場合の分岐被覆曲面結び目,トーラス被覆結び目について,その結び目群やチャート表示などについての自身の結果を述べる.


5月23日(水)

宮地 秀樹 氏(金沢大学)

タイヒミュラー空間論の位相幾何学的側面と複素解析的側面について

アブストラクト:閉曲面のタイヒミュラー空間は,リーマン面にリーマン面上の標識と呼ばれる位相データをつけて定義される標識付きリーマン面のモジュライ空間である.タイヒミュラー空間上にはモジュライの意味で自然な距離であるタイヒミュラー距離と呼ばれる完備な距離がある.タイヒミュラー空間は複素ユークリッド空間内の可縮な有界領域と双正則であるような複素構造をもつ.この複素構造に関してタイヒミュラー距離は小林距離と一致する.この講演では,タイヒミュラー距離による幾何学の位相幾何学的側面(サーストン理論)を概観し,タイヒミュラー理論の位相幾何学的側面と複素解析的側面の関係について,講演者の問題意識と得られている結果について話す.時間があれば,予想と問題について話す.