講演記録(敬称略、時系列逆順)

3月15日() ※通常の曜日・時間と異なります.

伊藤 秀一 氏(金沢大学)

ハミルトニアンとの出会い:感謝を込めて

今年度をもって金沢大学をご退職される伊藤秀一先生をご講演者にお迎えして,以下の通り数理学談話会他を開催いたします(どなたでもご参加いただけます).

3月15日(金)

16:00~17:00 数理学談話会(自然科学5号館大講義室)

17:15~18:15 伊藤先生を囲んだ茶話会 (数学会議室:自然科学5号館数学管理棟4F479号室)

19:30~ 歓送会(片町周辺にて:会費\6,000程度を予定)

なお、歓送会はできる限り当日参加に対応しようと思っておりますが,ご参加いただける方は,念のため3月8日(金)までに 以下問い合わせ先にご連絡いただけたら幸いです.

問い合わせ先:大塚浩史(ohtsuka@se.kanazawa-u.ac.jp


2月15日() ※通常の曜日と異なります.

古谷 賢朗 氏(東京理科大学)

Lagrangian submanifolds satisfying Maslov quantization condition

アブストラクト:

We consider a relation of spectra of Laplacians on the total space and the base space of a Riemannian submersion.

If the Riemannian submersion commutes with the Laplacians, then the spectrum of the base space is a part of that of the total space. In such case the Riemann submersion must be a harmonic map and vice versa.

We are interested in this talk, what is happening when the Riemannian submersion is not necessarily harmonic. Since if we may consider the base space of a Riemannian submersion as the configuration space of a physics system and the total space as the space of all “intrinsic” states, then there must be some relation between the spectra of the Laplacians on the base space and the total space, which are corresponding to the quantum states.

So I will talk on,

(1) Eigenvalue Theorem by Weinstein together with a review of the Maslov quantization condition and a remark for a sub-Laplacian case.

(2) Behavior of Lagrangian submanifolds under submersion.

(3) Some examples of Lagrangian submanifolds satisfying Maslov quantization condition.


1月30日(水) ※2件の講演があり,通常と時間が異なります.

15:30 ~ 16:30  杉山 健一 氏 (立教大学)

Heckeの基底問題について

アブストラクト:

保型型式を実際に構成する方法として,適当な2次型式からテータ関数を作成する方法が知られている.HeckeはBrandt行列から作られるテータ関数により重さが2の保型型式がもれなく得られると予想したが,これは後にEichlerにより否定された.本講演ではBrandt行列から作られるテータ関数の生成する空間を決定する.

17:00 ~ 18:00  志賀 弘典 氏

判別式 6 の 4 元数環に対する志村正準模型とその応用

アブストラクト:

判別式 6 の 4 元数環に対する志村曲線は定義式 C: X2+Y2+3Z2=0 で 与えられることが栗原章氏によって得られている(伊原先生の教示).この 4 元数環のユニット群 U は複素上半平面 H に作用する指数 (2,2,3,3) の四角群となることも 知られている.しかし,H 上の U に関する正準保型関数を用いて C を得ることは全然自明ではない. 本講演では,この保型関数をピカールの保型函数を用いて与え,その若干の応用を述べる(証明は志村先生の虚数乗法論の定理を用いる).

(Tea Time: 15:00~15:30 & 16:30~17:00)


1月21日() ※通常の曜日と異なります.

竹井 義次 氏(同志社大学)

パンルヴェ方程式のインスタントン解をめぐって

アブストラクト:

2階非線型常微分方程式であるパンルヴェ方程式の Stokes 現象では、 形式べき級数解とそれに指数的に小さい項を付け加えた transseries 解で 記述されるものが最も基本的である。しかし、完全 WKB 解析の立場から より一般の Stokes 現象を考察しようとすると、指数的に小さい項と 大きな項を同時に含んだインスタントン解が自然に現れる。 このインスタントン解の解析的な意味づけについては、残念ながら これまで良くわかっていなかった。本講演では、微分方程式の変換論に 基づいて、パンルヴェ方程式のインスタントン解の解析的な意味づけを 論じる。鍵となるのは、楕円函数が満たす定数係数の2階非線型常微分 方程式をある種の標準形と見なして、パンルヴェ方程式と結び付けると いうアイデアである。時間が許せば、楕円函数のインスタントン展開の 構造についても講演の中で触れる予定である。


12月19日(水)

永野 中行 氏(金沢大学)

K3曲面の変形に付随した保型形式

アブストラクト:

保型形式は強力な整数論的性質を持つ解析関数で,現在の数学における中心的な研究対象の一つです.歴史的には楕円曲線の変形に付随する関数として発見されました.さて,K3曲面は楕円曲線の自然な高次元化とみなすことができます.K3曲面の変形は代数幾何学, 組合せ論, 数理物理由来の方法など,色々な視点から研究することができます.今回は,K3曲面の変形に付随する保型形式の構成の幾つかの試みを紹介したいと思います。


12月5日(水)

中村 和幸 氏(明治大学)

非線形情報解析論に基づく時系列解析とその応用

アブストラクト:

非線形情報解析論は,確率過程にお非線形情報を取り扱うための枠組みであり,自己回帰型の線形時系列解析論を組み合わせることで,非線形情報を適切に取り扱った時系列解析が可能となる.談話会では,まず,線形時系列解析の手法ならびに非線形情報解析論について整理する.次いで,実問題では様々な現象時間スケールが存在することから,これに対応するための拡張について説明する.さらに,異常検出などの実データ解析への応用の結果,現在の取り組みや今後の展望について示す.


11月28日(水)

糸 健太郎 氏(名古屋大学)

SL(2,R)とSL(2,C)の幾何とその双曲幾何への応用

アブストラクト:

SL(2,R)は自然に3次元反ド・ジッター空間(負の定曲率を持つローレンツ多様体)と同一視できる.この空間はリーマン面の変形理論(タイヒミュラー空間論)に利用できることから双曲幾何の立場からも注目されている.この講演ではまずSL(2,R)の双曲幾何への応用について概観したのち,その理論のSL(2,C)における一般化について考えていることをお話ししたい.


10月17日(水)

黒川 信重 氏

オイラーと絶対ゼータ関数

アブストラクト:21世紀の絶対ゼータ関数論の先駆けとして,オイラーが1774年~1776年に 行った考察に深い意味があったことが2017年に発見された.その周辺を話したい.


7月25日(水)

吉野 正史 氏(広島大学)

ボレル総和法の見地からの正則ベクトル場の線形化問題について

アブストラクト:Cn の原点の近傍で正則なベクトル場を原点を固定する座標変換で線形化するという問題を考える.これはポアンカレ以来多くの重要な研究がなされてきた問題である.よく知られているように,この線形化問題では小分母の問題という発散の問題がおこり,Diophantine条件を用いた解析がなされている(Stolovitchなど).Diophantine条件は発散をコントロールする方法であるが,発散をとらえる別のやり方として,Ito氏の研究のアイデアである可積分性に注目するという考えも有用である(たとえばZungの研究なども参照).これらの研究を踏まえて,パラメトリックボレル総和法を用いて,変換の構成であらわれる発散を意味づけする方法について考察する.基本的な考え方は,変換の満たすホモロジー方程式を考え,これの解として得られる座標変換の構成でパラメトリックボレル総和法を用いる.つまり,形式的な座標変換として構成された発散級数のボレル総和法での意味付けを行うことにより解を構成するいう考えによる,我々はこの視点からいくつかの結果がえられたことを報告したい.結論としてボレル総和法は力学系の研究では有用であるが,線形化問題にたいしても適用可能であることがわかったということになる.

参考文献:Masafumi Yoshino, Analytic continuation of Borel sum of formal solutionof semilinear partial differential equation, Asymptotic Analysis 92 (2015) 65-84. DOI 10.3233/ASY-141270.


7月11日(水)

Kei Kobayashi 氏(Fordham University)

Stochastic differential equations modeling subdiffusions and their strong approximation scheme

アブストラクト:Standard Brownian motion composed with a random time change given by an inverse stable subordinator has been used to model subdiffusions, where particles spread more slowly than the classical Brownian particles. The time-changed Brownian motion is neither Markovian nor Gaussian and has densities satisfying a time-fractional order heat equation; thus, standard procedures known for normal diffusion processes do not generally work. The first part of this talk gives an overview of various properties of the time-changed Brownian motion, which is followed by an introduction of associated stochastic differential equations and their numerical approximation scheme. The effectiveness of the scheme is verified through a discussion of the rate of strong convergence.
The talk is based on joint work with Molly Hahn, Sixian Jin, Ernest Jum, and Sabir Umarov.


6月20日(水)

中村 伊南沙 氏(金沢大学)

分岐被覆曲面結び目,特にトーラス被覆結び目について

アブストラクト:曲面結び目とは,4次元ユークリッド空間内に埋め込まれた閉曲面の全同位による同値類のことである.講演者は曲面結び目の中でも特に,曲面結び目の分岐被覆の形をした曲面結び目,分岐被覆曲面結び目について研究している.この講演では曲面結び目の不変量や鎌田のチャート表示について紹介し,底となる曲面結び目が標準的に埋め込まれたトーラスである場合の分岐被覆曲面結び目,トーラス被覆結び目について,その結び目群やチャート表示などについての自身の結果を述べる.


5月23日(水)

宮地 秀樹 氏(金沢大学)

タイヒミュラー空間論の位相幾何学的側面と複素解析的側面について

アブストラクト:閉曲面のタイヒミュラー空間は,リーマン面にリーマン面上の標識と呼ばれる位相データをつけて定義される標識付きリーマン面のモジュライ空間である.タイヒミュラー空間上にはモジュライの意味で自然な距離であるタイヒミュラー距離と呼ばれる完備な距離がある.タイヒミュラー空間は複素ユークリッド空間内の可縮な有界領域と双正則であるような複素構造をもつ.この複素構造に関してタイヒミュラー距離は小林距離と一致する.この講演では,タイヒミュラー距離による幾何学の位相幾何学的側面(サーストン理論)を概観し,タイヒミュラー理論の位相幾何学的側面と複素解析的側面の関係について,講演者の問題意識と得られている結果について話す.時間があれば,予想と問題について話す.