数学コースでは4年次になると数学課題研究が始まります。これは一人の教員の下で研究テーマを決めて少人数(2~3名)の指導を受けるもので,数学書の輪講を行うことが基本になります。

輪講とは何人かで当番を決めて本を読んでいくことですが,これは得難い「プレゼンテーション」の経験であり,そこで数学的・論理的な考え方を鍛えられることになります。また,これは単なるテキストの内容の紹介ではなく,その内容を自らが再構成してみせる作業であり,それまでの「講義に出席する」という受身の勉強を脱して,数学を深く理解するきっかけになります。実際,数学書を読むとき,一人で読んでいてもわからなかったことが,人前で発表することを通じてわかるようになることがしばしばあります。なお,テキストは英語で書かれたものを用いることもありますが,数学で用いられる英語には概して複雑な構文は少なく,最初は戸惑いますが,恐れるに足りません。

このように,ひとりの人があるテキストの内容なり,時には自分の新しい結果を少人数の聴衆を前に発表することを『セミナー』と呼んでおり,これは大学院生に対しても,さらには研究者の間でも行われています(その場合は,指導教員はいません!)。なお,1,2年次でも初学者ゼミや数学基礎セミナーといった授業がありますが,それらはこのセミナーの疑似体験といったものといえます。

数学の研究者が自分の結果を発表するのは,それを論文にして学術雑誌へ投稿し出版することが基本ですが,それと同時に,国内外で開かれる専門家の間でのセミナーや研究集会・国際会議で発表することも大事な研究活動です。また,数学科・数学コースをもつ大学では,談話会あるいはコロキウムと称して,セミナーのように狭い専門分野のメンバーだけではなく,分野の異なるより広い聴衆に向けて研究成果を発表する機会を設けています。この場合,外国も含めた他大学からゲストを招くことが多く,専門以外の分野のメンバーとの交流とともに,他国・他大学の研究者との交流にとって大切な機会になっています。当コースでは,計算科学コースの計算数理プログラム担当の教員と協力して「数理学談話会」を主催しています。

なお,これは世界中で行われているスタイルですが,談話会の開始前にはお茶の時間があり,スタッフやゲストの間の交流の場となっています。学生・院生の人も奮って参加してください。