数理学談話会について
- どなたでもお聴き頂けます(参加費無料).他学部や他大学からの方や学生の方もお気軽にお越し下さい.
- 多くのご講演は,(その分野がご専門ではない)一般の数学者にも導入部はご理解いただけるレベルで行われます.
- 講演の始まる30分前(複数の講演がある場合は、たいていは最初の講演の30分前)から,数学会議室(4階479号室)にお茶とお菓子が用意されます.参加者はご自由にお召し上がり頂けます.
- 通常の場合、談話会は
- 水曜日の16:30から17:30までの1時間
- コロキウム3(自然科学5号館数学・管理棟4階471号室)
にて行われます。異なる場合のみ赤字で記載しています.
- 数理学談話会委員:杉山真吾,Patric van Meurs.
令和6年度の予定
【日時】2025年3月27日 (木) 16:30–17:30
【会場】金沢大学自然科学5号館 コロキウム室3(数学・管理棟 4階)
【講演者】杉山健一氏(立教大学)
【タイトル】合同数問題とその周辺
【アブストラクト】有理数nは,有理数a, b, c(ただしcを斜辺の長さとするを3辺の長さとする直角三角形の面積
に等しいとき合同数と名付けられた.合同数の特徴付けは「合同数問題」と呼ばれ,ギリシャ時代から
研究されてきた.合同数問題は最近まで未解決の問題であったが,最終的にTunnellによりその判
定方法が得られた(1983年).よく知られた公式からc^2=a^2+b^2, n=ab/2となるのでnは平方
因子を持たない整数として良い.このときnが合同数であることと,楕円曲線E_n:y^2=x^3−n^2x
が無限個の有理数解を持つことと同値となる.BirchとSwinnerton-Dyerの予想 (部分的に解決)に
よると,この事実はE_nのL関数L_{E_n}(s)がL_{E_n}(1)=0を満たすことと同値なので,合同数問題は
L_{E_n}(s)のs=1での値を知ることに帰着される.Tunnellはこの値が,重さが3/2,レベル128の
あるテータ関数のn番目のフーリエ係数から求められることを示した(このような楕円曲線のL関
数とテータ関数との対応は「志村対応」と呼ばれる).Tunnellの結果は,B¨ocherer, Gross, Kohnen,
Schulze-Pillot, 志村, Zagier, Waldspurger による研究結果に基づくが,この講演ではこれらの事実
を解説する.また講演の最後で,発表者による研究結果を紹介する.
【日時】2025年1月8日 (水) 16:30–17:30
【会場】金沢大学自然科学5号館 コロキウム室3(数学・管理棟 4階)
【講演者】野澤啓氏(立命館大学)
【タイトル】曲面群の円周への作用の剛性について
【アブストラクト】
リーマン面の基本群の円周への作用は,フクスやポアンカレ以降研究され続けている古典的な研究対象である.ミルナー・ウッドの不等式により,双曲リーマン面の基本群の円周への作用のオイラー数は,その曲面のオイラー数の絶対値以下となる.さらに,松元の剛性定理により,等号成立が成立するような群作用は,フクス作用という標準的な作用にある意味でほぼ共役となる.本講演では,懸垂束上の調和測度という概念を使うサーストンの解析的なアプローチについて述べる.ミルナー・ウッドの不等式において等号が成立するような群作用については調和測度がポアソン核に似た表示を持つことを示し,応用として上記の剛性定理の別証明を与える.(足立真訓氏(静岡大),松田能文氏(青山学院大学)との共同研究に基づく)
【日時】2024年10月23日 (水) 16:30–17:15
【会場】金沢大学自然科学5号館 コロキウム室3(数学・管理棟 4階)
【講演者】甘中 一輝 氏(金沢大学理工研究域)
【タイトル】Clifford-Klein形の幾何学
【アブストラクト】等質空間G/HをGの離散部分群Γの作用で商を取る事によって得られる多様体Γ\G/HをClifford-Klein形と呼ぶ。例えば双曲多様体などの定曲率空間はClifford-Klein形の構造を持つ。Clifford-Klein形は、例えばSelberg, Weil, Mostow, Margulis等に名を冠する剛性定理等、リーマン幾何の枠組みで広く研究されてきた。一方、相対論で時空のモデルとして用いられるローレンツ幾何、より一般の擬リーマン幾何に目を向けた時にも、Clifford-Klein形の幾何学において興味深い現象が近年に至るまで徐々に発見されてきている。本講演では後者の研究の一部を概観すると共に講演者により得られた最近の結果をご紹介したい。
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【日時】2024年10月23日 (水) 17:30–18:15
【会場】金沢大学自然科学5号館 コロキウム室3(数学・管理棟 4階)
【講演者】神本 晋吾 氏(金沢大学理工研究域)
【タイトル】リサージェンス理論とその展望
【アブストラクト】リサージェンス理論は, 1980年代の J. Ecalle による一連の研究から始まった. リサージェンス理論とは, 対象の漸近挙動や形式的構造から, その解析的構造を復元するという強力な理論である. 近年は, 場の量子論など理論物理学への応用も盛んに行われ, その研究は爆発的な勢いで進められている. 本講演では, このリサージェンス理論について概説し, 最近の進展についても紹介したい.