講演記録(敬称略、時系列逆順)
【延期】3月13日(金) ※通常と曜日・時間・場所が異なります.
新型コロナウィルスの感染拡大を考慮して、本談話会は延期となりました。開催日が決まり次第、お知らせいたします。
数理学談話会(於 自然科学5号館大講義室)
16:00〜16:45 加須栄 篤 氏 (金沢大学) TBA
17:00〜17:45 菅野 孝史 氏 (金沢大学) TBA
18:00~19:00 加須榮先生, 菅野先生を囲んだ茶話会 (於 数学会議室:5号館数学管理棟4F479号室)
1月22日(水)
Jack Koolen 氏 (University of Science and Technology of China)
Recent progress in the theory of distance-regular graphs
アブストラクト: In this talk I will give some recent results on distance-regular graphs. This is based on joint work with Mengyue Cal, Jongyook Park, Ying Ying Tan, Sebi Ciaoba and Paul Terwilliger.
11月1日(金) ※通常と曜日が異なります
Pavel Exner 氏(Doppler Institute for Mathematical Physics and Applied Mathematics, Prague)
Unexpected spectral properties of periodic quantum graphs
アブストラクト: The talk addresses a mathematical physics problem. From the mathematical side, the aim is to illustrate that a nontrivial topology of the configuration space or number-theoretic properties of the parameters involved can lead to a variety of spectral types. We discuss this question with the focus on second- order equations used in physics to describe periodic quantum systems. Such a PDE in a Euclidean space has typically the spectrum which is absolutely continuous, consisting of bands and gaps, the number of the latter being determined by the dimensionality. If analogous second-order operators on metric graphs are considered, a number of different situations may arise. Using simple examples, we show that the spectrum may then have a pure point or a fractal character, and also that it may have only a finite but nonzero number of open gaps. Furthermore, motivated by recent attempts to model the anomalous Hall effect, we investigate a class of vertex couplings that violate the time reversal invariance. We find spectra of lattice graphs with the simplest coupling of this type and demonstrate that it depends substantially on the parity of the lattice vertices, and discuss consequences of this property.
10月30日(水)
眞野 智行 氏(琉球大学)
複素鏡映群の平坦不変式と鏡映面配置の自由性
アブストラクト:1970年代に齋藤恭司により自由因子の概念が導入され,実鏡映群の鏡映面からなる超平面配置(コクセタ配置)が自由配置であることが示された. 複素鏡映群の鏡映面が自由配置になることは1980年に寺尾宏明により証明された. さらに1989年にZieglerにより多重超平面配置の概念が導入され,2002年に寺尾宏明 により多重コクセタ配置の自由性が証明された.これについては吉永正彦により, 実鏡映群に関する平坦構造(特に原始微分についての性質)を用いた別証明が与えられている. 複素鏡映群に対する多重鏡映面配置の自由性については未解決であったが, 2015年に加藤-関口-眞野によりwell-generatedな複素鏡映群に対して平坦構造の理論が拡張され,それを基に吉永の議論を拡張することにより多くの場合に多重鏡映面配置の自由性が証明された.本講演ではこの結果について解説する.なお,この結果はT. Hoge, G. Roehrle, C. Stumpとの共同研究に基づく.
8月21日(水)
Kei Kobayashi (小林 圭)氏(Fordham University)
Effect of random time changes on Loewner hulls
アブストラクト: A real-valued driving function for the chordal Loewner equation generates Loewner hulls in the upper half-plane. This talk explores the geometric effect on the Loewner hulls when the driving function is composed
7月29日(月) ※通常と曜日が異なります
Dragomir Saric 氏(City university of NewYork)
An interplay between hyperbolic and flat metrics
アブストラクト:We consider the universal Teichmuller space and introduce a Thurston boundary using the hyperbolic metric. The Teichmuller geodesics are obtained by shrinking the vertical directions of the flat metrics. We describe limits of Teichmuller geodesics in Thurston boundary as well as limits of Teichmuller disks. Parts of this work are joint with F. Bonahon, H. Hakobyan, and H. Miyachi.
7月24日(水)
石渡 聡 氏(山形大学)
多様体の連結和上の幾何解析
アブストラクト:ユークリッド空間や周期的構造を持つような”美しい空間”は,熱核の挙動やSobolevの不等式,固有値のよい評価等様々な解析的なよい性質をもつことが知られている.本講演ではそのような解析的な構造を持たない”美しくない空間”の代表的な例である非コンパクトリーマン多様体の連結和上のいくつかの解析的な性質について述べる.講演の内容は Bielefeld大学のA. Grigor’yan氏,Cornell 大学の L. Saloff-Coste 氏との共同研究に基づく.
6月26日(水)
赤塚 広隆 氏(小樽商科大学)
約数を走る和の上極限について
アブストラクト:1915年,Ramanujanは約数の個数を数える関数d(n)に関係する様々な概念を導入し,d(n)の上極限に関する性質を調べた.彼は他の乗法的関数についても類似の研究を行った.しかし,1915年の論文ではd(n)に関する研究のみが出版され,他の部分は出版の段階で削除された.削除された部分については,20世紀の後半になりAndrews, Nicolas, Robinらの助けを得て公開された,本講演では,まず上述のRamanujanが導入した諸概念について説明する,そして,約数を走る和で定まる乗法的関数の上極限に関する性質と,ゼータ関数の零点分布との関係について説明したい.
5月22日(水)
田島 慎一 氏(新潟大学名誉教授)
非孤立特異点とホロノミーD-加群のモノドロミー構造
アブストラクト:P. Deligneは, 1970年代の初めにderived categoryの枠組みを用いて vanishing cycle sheafの概念を導入し, vanishing cycle sheaf complexの cohomologyは, 特異点集合のWhitney stratificationの各stratum上, constructible sheafとなること等を示した. 孤立特異点の場合は, Milnor fiberに関する研究がなされvanishing cycleについて多くのことが明らかにさ れた. 特異点集合が孤立していない場合, D. Siersma, D. Massey, D. Barlet らの深い研究があるが, 一般に, vanishing cycleの構造を決定することは, 現在でも極めて困難である. 本講演では, 非孤立特異点をもつ超曲面に対しそ のvanishing cycle sheaf の構造を調べる新たなアプローチを紹介したい. こ のアプローチの鍵となるのは, b-関数とホロノミーD-加群の理論および局所コ ホモロジーの概念である.
5月15日(水)
松谷 茂樹 氏(金沢大学)
オイラー・ベルヌーイの弾性曲線とその一般化:楕円関数の故郷から先進数理解析
アブストラクト: ヤコブ・ベルヌーイが提示しダニエル・ベルヌーイとオイラーが解決した弾性曲線(elastica)の問題は,建築学を発端とする問題であり、同時に楕円関数の故郷でもある。ヤコブ・ベルヌーイは「平面上の弾性曲線の形状を決定せよ」という弾性曲線の問題を提示した3年後に、図示解法により弾性曲線のある特殊な形状がレムニスケート積分により表現できることを発見した。ヤコブの後を追ってダニエル・ベルヌーイが最小原理を発見し、それによりオイラーが変分法を整備し、楕円積分により形状を定式化し、数値積分による図示することにより、問題を解決した。これは現代的には変形KdV方程式の特殊解の発見であり、楕円ζ関数の発見でもある。本講演ではまずオイラー・ベルヌーイの弾性曲線の研究について主に述べる。
講演では、次に講演者の主たる研究テーマであり、これらの一般化である弾性曲線の統計力学の問題と、その問題の解決に向けてのアーベル関数論の再構築(ワィエルシュトラスの楕円σ関数のより一般の代数曲線への一般化)について解説する。
また、講演の前と後には現代数学と技術の関係について少し触れる。21世紀に入り産業界は高度な数学を利用せねばならない状況を迎えている。オイラーらの弾性曲線の研究をひな形として高度な数学を使って技術課題を解決する解析が必要となっている。これを先進数理解析と呼んでいる。整数論や特異点論、量子ウォークなどがプリンターや材料科学などに関連する解析事例についても少し触れる。