第93回金沢解析セミナー(2022/8/5)
日時:8月5日(金) 16:30–18:00 第93回金沢解析セミナー
場所:ハイブリッド(対面:自然科学5号館コロキウム3, オンライン参加登録:https://forms.gle/RxhNYE6Fra3CZqaG7)
講演者: 勝呂 剛志 氏(京都大学・数理解析研究所)
タイトル : 一般化エントロピーに対するモーメント不等式とその応用
アブストラクト: 統計力学や情報理論に現れる Boltzmann--Shannon エントロピーは, Boltzmann 方程式を始め, 熱方程式や Keller--Segel 系といった偏微分方程式の研究においても重要な役割を担う量である. 近年では, Boltzmann--Shannon エントロピーの一般化である Tsallis エントロピーや Rényi エントロピーが注目されている. これらは, 対数函数により特徴付けられるBoltzmann--Shannon エントロピーに対して, 冪函数あるいは冪乗則に端を発するものであり, 対数函数の拡張という観点で情報幾何学の分野においても重要視されている. 偏微分方程式論においては, これらの一般化エントロピーと多孔質媒質中の物質の運動を記述する方程式であるporous-medium 方程式との関連が知られている. ここでは, 情報理論において重要な一般化エントロピーに対するモーメント不等式の最良定数とそれを達成する函数を考察する. さらに, 一般化エントロピーと Fisher 情報量に関する評価である対数型 Sobolev の不等式とモーメント不等式のある不確定性関係を通した双対性について述べ, これらの一般化エントロピーに関する函数不等式がある偏微分方程式の汎函数を用いることで特徴付けがなされることについて述べる. また, 時間があれば, これらの函数不等式の準線形移流拡散方程式の初期値問題への応用について触れる.